大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(う)42号 判決

被告人 矢吹徳男

〔抄 録〕

なお職権で調査するに、被告人に対する前科調書によれば、被告人は昭和三十一年九月十四日東京地方裁判所において暴力行為等処罰に関する法律違反の罪により懲役四月但し三年間執行猶予の判決言渡を受け、右判決は同月二十九日確定していることを認めることができ、原判決判示第一乃至第六の各事実は右判決確定前のものであり、同第七及び第八の各事実は同確定後のものであることは判決自体に照らし明白である。他面原判決言渡の昭和三十四年十月十九日には右確定判決の刑の言渡は執行猶予期間の経過によりその効力を失つていることも明らかであるが、刑法第二十七条にいわゆる刑の言渡はその効力を失うとは刑の言渡に基く法的効果が将来に向つて消滅するというだけの趣旨であつて、刑の言渡を受けたという既往の事実そのものまで全くなくなるという意味ではないのである。(最高裁判所第一小法廷昭和二九年三月一一日判決、集八巻三号二七〇頁参照)。そして刑法第四十五条後段に「或罪ニ付キ確定裁判アリタルトキハ止タ其罪ト其裁判確定前ニ犯シタル罪トヲ併合罪トス」とあるのは確定裁判のあつた罪とその裁判確定前に犯した罪とは同時審判可能の状態にあつたという事実関係に基き、これを併合罪とする趣旨であるから、確定裁判があつた以上、その執行猶予期間を経過した後でも、その裁判は刑法第四十五条後段にいわゆる「或罪ニ付キ確定判決アリタルトキ」に該当するものといわなければならない。してみれば、原判決認定の判示第一乃至第六の事実と同第七及び第八の事実は刑法併合罪の規定の適用上は併合罪とはならず前記確定判決により二分せられ、右判決前の事実と後の事実とについてそれぞれ別個の刑を言い渡すべきである。しかるに原判決は右第一乃至第八の事実全部を併合罪と認め一個の刑を科しているのであるから、原判決は結局刑法第二十七条及び第四十五条の解釈適用を誤つたか、前示確定判決の存在を看過して刑法第四十五条後段を適用しなかつた違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである。よつて原判決はこの点において破棄を免れない。

(岩田 渡辺辰 司波)

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